お知らせ
阪神淡路、東北、鳥取など、近年、大規模な地震による災害が頻発しています。いつ、私たちが住む多摩の街も大きな震災に見舞われても不思議ではありません。人災は避けられますが天災は避ける事はできず、日頃からの被害を最小限にとどめる為の備え、二次的な被害を被らない為の工夫が重要になってきます。私共、多摩歯科医会におきましても「大規模災害時の歯科医師会行動計画マニュアル」を策定して、大規模災害発生時には、多摩歯科医会会員の歯科医師は、この「災害時行動計画マニュアル」に従って行動する事になっています。 マニュアルでは、「震度5強の地震が発生した場合には、多摩歯科医会会員は自分が指定されている災害救護所に駆けつけて、医師会の先生方と協力して被災された方々の救護にあたる事」また、「基本的には、自身の歯科医院の被害状況を確認したのち、72時間は自院に於いての診療は行わずに災害救護所において救護活動に従事する事」となっております。従って、地震発生から3日間は、歯科医院は開いていないと言う事になります。 また、災害救護所においては、命にかかわるような重症の方々に対する対応が最優先となりますので、「むし歯が痛い」とか「歯周病で食べ物がうまく咬めない」、「入れ歯が無くなってしまったので新しく入れ歯を作って欲しい」と言った要望にまではおこたえする事が出来ません。特に入れ歯に関しては、入れ歯を作る歯科技工士さんや歯科技工所の設備も被害を受けてしまうので、新しい入れ歯はそう簡単には手に入りません。そういった意味で、歯科的には、「むし歯」は治療が出来るうちに治しておく、日頃からかかりつけの歯科医院で歯周病の管理をしておく、寝る時には「入れ歯」は枕元(手の届くところ)に置いておく、などが最大の災害対策になってきます。 また、地震の発生から72時間(おおむね3日)が経つと重症の方々に対する対応も一段落して、建物の倒壊などの被害を逃れた歯科医療機関も少しずつ機能を取り戻してきますが、歯科機材は電気と水が無いと機能しないので充分な対応は出来ません。痛みを取り除く除痛処置や壊れた入れ歯の修理などが対応の中心になります。また、この頃になると口腔ケアが大変重要になってきます。私たちの口の中には無数の細菌が住みついています。口から食べ物を食べているかいないかにかかわらず、歯磨きをしないでいると口の中に住みついている細菌が時間と供にどんどん数を増してゆき、やがて眼に見えるほどの細菌の塊、いわゆる歯垢になります。避難生活が長く続くと充分な栄養や水分の確保がしにくくなり、低栄養・脱水といった状態になってしまいます。特に体に予備力の無い御高齢の方が低栄養・脱水といった状態に陥っている時に、細菌の塊(歯垢)が唾液などと供に気道(肺に繋がっている空気の通り道)に入ってしまう(いわゆる誤嚥という状態)と肺炎を起こしてしまいます。最悪の場合、この誤嚥性肺炎が原因で命を落としてしまう事もあります。せっかく、被災を免れて助かった命を歯磨きが出来なかったために落としてしまうという事もあるのです。 私共、多摩歯科医会といたしましても、被災を逃れた歯科診療所に御越し頂いた方々はもとより、各避難所にも回らせて頂き口腔ケアを行う事になっておりますが、そもそも歯ブラシが無くては充分な歯磨きは出来ません。歯ブラシもある程度の備蓄はしておりますが、多摩市民全員分は到底用意は出来ませんし、災害時にはコンビニで買う事も出来ませんので、災害時用避難バッグの中に「歯ブラシ」を御家族の人数分入れておく事を忘れないで下さい。 平成28年12月発行 救急便り109号より |