お知らせ
原稿を書いている今日、8月21日の時点で、東京の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規患者数は24,784人、先週の同じ曜日より2,040人多いと伝えられ、ピークは過ぎたものの依然高止まり状態が続いています。
今回は、小児科の発熱外来の現状をお知らせすることで、受診や家庭での療養の参考にして頂きたいと思います。この救急便りを手にされるのは9月になってからだと思いますが、その頃には、いくらかでも発熱外来の混雑が解消されていることを願っています。 実感されている方も多いかと思いますが、COVID-19の第7波が始まった7月以来、発熱外来は混み合い、予約の電話がつながらず、ご迷惑をお掛けしている状態が続いています。 その一方では、最近、COVID-19以外にも、子どもたち、特に乳幼児の間で流行っている発熱をともなう感染症があります。 RSウイルス(RSV)とヒトメタニューモウイルス(hMPV)、そして手足口病です。RSVは、感染により発熱や咳・鼻水など、風邪症状を起こすウイルスで、2歳までにほぼすべての子どもが1度は感染するとされています。初めて感染したときは2割から3割が、肺炎や気管支炎を起こすと言われ、特に生後数か月の赤ちゃんでは症状が重くなることがあります。繰り返し感染しますが、症状はだんだん軽くなります。 従来は冬場に多い感染症とされていました。一昨年は社会活動の抑制があり、ほとんど見られませんでしたが、昨年は春から夏にかけて大流行しました。今年もこの夏の時期に増加しています。 hMPVもRSVと似た風邪症状を起こします。春や夏に流行が見られ、乳幼児や高齢者では重症になることがあります。 このように、これらはCOVID-19と症状からは区別することは難しく、はっきりさせるためにはPCR法などによる遺伝子検査や抗原検査が必要になってきます。 しかし、いずれのウイルス感染症でも、外来で容易に処方できるインフルエンザのような特効薬はなく、対症療法で経過を見ることになります。家庭では、熱や咳があっても、夜は眠れて、昼間遊ぶ元気があり、水分や食べ物が摂取出来ていれば、まず様子を見て大丈夫ですが、咳や息苦しさでゆっくり眠れなくなったり、経口摂取が落ちてきたり、元気がなくなり、ゴロゴロしている、といった症状があれば、早めの受診が必要です。 小児では、現在の流行の主流であるオミクロン株によるCOVID-19の咳症状は、RSVやhMPVより軽い印象があります。また、年長児ではのどの痛み、頭痛、だるさの訴えが多くなるようです。 手足口病は手や足、それに口の中に発疹ができるウイルス感染症で、主に5歳以下の子どもで夏に流行します。熱は軽度のことが多いのですが、今年の手足口病は、最初高い熱が出て、後になって発疹が出てくる子どもさんも多く、初期にはCOVID-19と区別できないことも少なくありません。 これらの感染症の感染様式は、いずれも飛沫感染や接触感染が主で、感染対策は同じです。 今回は、小児科発熱外来の現状を紹介しました。子どものCOVID-19は大人と比べると概して症状は軽く、発熱も2-3日のことが多いのですが、家庭で、ご両親や重症化しやすい高齢者に移ったり、また社会的制約が生ずることから、どうしても早めの診断が求められます。 効果的な予防接種の普及や、外来で使いやすい治療薬が開発され、行動の制約がなくなり、COVID-19に限らず、他の感染症でも症状の重い人が確実に受診できるような状況となることが望まれます。
令和4年9月発行 救急便り132号より |