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「傷の治し方 病院に行く?」

どなたも日常生活の中で「転んで擦りむいてしまった」「包丁で指先を切ってしまった」などの軽い傷やけがの経験があると思います。症状が軽ければ絆創膏をするか何もしなくても治るでしょう。では傷が大きく深かったり、痛みが強いときや出血が多いとき、どのような場合に医療機関を受診すればよいのでしょう?これはほかの病気で医療機関を受診する場合と同様に「自分では治せそうにない。早く、後遺症を残さず治したい。痛みを早くなくしたい。」このような場合に受診するとよいのですがよく遭遇する傷を大きく2つに分けて目安をお伝えします。

【擦り傷、切り傷(擦過(さっか)創(そう)、切(せっ)創(そう))】
これらは初めに紹介した地面などで擦れたものや鋭利な刃物などでスパッと切れたものです。まずはどんな傷も水道水で流しましょう(洗浄)。消毒するより感染のリスクが抑えられます。その後出血していればきれいなガーゼやタオルをあてて手でおさえます(止血)。この後ご自身で処置をする場合は傷を密閉するタイプの高機能な被覆(ひふく)絆創膏を使用しましょう。近年では多くの傷は「消毒しない」「乾燥させない」ほうが早くきれいに治ることが証明されています。医療機関を受診する目安ですが「痛みが強い、受傷部位が顔面、洗浄しても異物が残っている、止血できない、被覆(ひふく)絆創膏で覆えない大きさ(切り傷の場合約1cm以上)、覆えても体液が大量に漏れてくる、皮下脂肪が見えている」このような場合は受診したほうがよいでしょう。

【刺し傷、うち傷、噛み傷(刺(し)創(そう)、挫滅(ざめつ)創(そう)、咬(こう)創(そう))】

そのほかには木片などの刺さった刺し傷、壁などにドンとぶつかってできる打撲と傷が混ざったうち傷、動物にかまれた場合の噛み傷があります。まずは受傷直後に洗浄と止血を行いましょう。刺し傷うち傷は症状が軽ければ上記の密封タイプの絆創膏を使用します。噛み傷では密封すると細菌が増えるため密封タイプの絆創膏は使用できません。ガーゼなどで保護しましょう。これらの傷は擦り傷、切り傷に比べ見た目より深いところまで障害がおよんでいたり、異物の残存や細菌感染のリスクが高くなります。このため迷ったら早めに受診することをお勧めします。病院では薬の処方箋以外に症状によっては局所麻酔後切開し洗浄や異物を取り出したり、傷を縫ったり破傷風ワクチンを接種する場合があります。受診の目安としては「痛みが強い、受傷部位が顔面、刺し傷であれば深さが不明、異物感がある、屋外にあるもので刺した、うち傷であれば傷の大きさ深さが軽傷に見えても皮下出血や腫れが強いとき、噛み傷ではわずかでも周囲が赤く腫れてきたり受傷時より痛みが増してきた場合」などです。

病院を受診する場合はまず形成外科、皮膚科、整形外科、外科のいずれかを標榜している医療機関がよいでしょう。もし「痛みなどで動けない、大量出血している、意識がはっきりしない」これらの症状がある場合は救急車を要請してください。自身で処置できるか病院に行くか救急車を呼ぶか迷った場合は「#7119 救急相談センター」を利用しましょう。年中無休で適切なアドバイスを受けられます。

令和元年12月発行 救急便り第121号より
桜ヶ丘皮膚科医院 渋谷 博文 先生